
今回は、損益計算書からの収益性の改善が、思うように経営改善効果を得られない理由と貸借対照表の資産・負債が損益計算書に与える影響について書きます。
損益計算書からの収益改善の限界!
損益計算書の収益改善をする場合は、売上対比の構成割合が大きなものから改善するのが鉄則です。
経営管理手法としては、経年比較による比率分析の差異が大きく悪化している勘定科目から優先的に改善していくこととなります。
ここで、重要なポイントは、収益性の改善に際しては、損益計算書の勘定科目の改善の検討と同時に、貸借対照表の資産や負債が損益計算書に与える影響を検討する必要があるということです。
しかし、収益性の改善を検討するときに、資産・負債が損益に与える影響を所与としている、あるいは、資産・負債が損益に与える影響と営業活動から生じる影響(現場にて管理可能な費用)を混在して改善の議論をしていることは、ありませんか?
資産・負債が損益計算書に与える影響を所与とするということは、資産から得られる収益性が低下している・負債の支払利息が増加しているにもかかわらず、営業活動の費用削減のみにて損益の収益性の改善を図るということです。
結果、資産・負債が損益計算書に与える影響は取りこぼされるだけでなく、取組みやすい改善活動に終始し本質的な経営改善に至らないこととなります。
また、資産・負債の収益性低下による影響も営業活動の改善にて対処するということは、現場に過剰な負担を強いることとなります。
通常、資産・負債の取得は、経営の意思決定に関わる事項であるため、現場が率先して改善に取組むことはありません。
資産・負債の損益計算書への影響を無視して過度に改善を求めると現場の不平不満を招いたり、改善への抵抗となったりと状況の悪化を招く恐れがあります。
資産・負債の損益に与える影響の把握・改善活動は、業務推進を行う部門とは異なる部門の管掌事項となります。
経営サイドは、資産・負債が損益に与える影響を、業務推進上で発生する影響(現場で管理可能な費用)とは区別して改善をしていくことが必要となります。
貸借対照表の資産・負債が損益計算書に与える影響とは!?
貸借対照表の資産の構成科目である棚卸資産や建物設備等の有形固定資産、ソフトウェアなどの無形固定資産、その他投資等の資産は、期首棚卸高/当期製造・仕入高/期末棚卸高として売上高原価や、減価償却費などの勘定科目で損益計算書の費用を構成しています。
したがって、これらの資産は、売上や粗利の増減に対して適切な取得・保有や、稼働率を適正に管理することで、費用の低減が図れ、結果、収益性が向上します。
また、負債の銀行借入金等は、営業外支出として損益計算書の費用を構成しています。
金融負債の削減は、金利や借入額の適切な管理は、支払利息の低下が図れ、結果、収益性が向上します。
また、これらの資産・負債が費用として損益計算書に与える影響は、売上構成割合の大部分を占めている場合が少なくありません。
経営サイドは、適切に管理するだけでなく、現場に提示する損益計算書や経営資料においては、その影響と業務推進の影響(現場にて管理可能な費用)を区分して表示することによって、より責任範囲が明確となり好ましい状態が構築できます。
定期的な資産・資本収益性管理の重要性!
それでは、資産・負債が損益計算書に与える影響を管理するには、どのようにすれば良いでしょうか?
筆者は、これらの資産・負債は回転率などの効率性の指標ではなく、資産・資本収益率や金額で管理することを提唱しています。
理由は、回転率等の効率性は、経年比較による差異の変化が自社の業績にどのような影響を及ぼすか理解しにくいからです。
その点、収益率や金額による資産・資本の収益性指標の場合、業績に与える影響を理解しやすくなります。
例えば、「棚卸資産対売上高粗利率が300%から250%に低下した結果、500万円の売上原価の上昇を招いた。」ということです。
資産・負債を収益性で管理することで、当該管掌部門との損益に与える影響の共通認識および改善の必要性の危機感が高まるということです。
また、これらの資産・負債の収益性管理は、資産・負債毎の回転日数に応じて定期的に行うことも必要となります。
定期的な管理が、自社にとって効率的かつ適切な資産・負債を形成することとなります。
この記事のまとめ
以上、本ブログでは、「損益計算書からの収益性の改善が、思うように経営改善効果を得られない理由と貸借対照表の資産・負債が損益計算書に与える影響」について書きました。
本ブログのポイントをまとめると以下となります。
- 収益性の改善においては、資産・負債が損益計算書に与える影響を検討する。
- 資産・負債が損益に与える影響を管理するのは業務推進とは別の部門の管掌事項である。
- 資産・負債が損益に与える影響と業務推進の影響は、区分して業績表に反映する。
- 資産・負債は収益性指標で管理する。
- 定期的な資産・負債の管理が効率的な資産・負債構成を形成する。